コーヒーイメージ

珈琲の持つ、他の飲み物にはない特徴

珈琲には、他の飲み物にはない特徴があると思います。
それは、その場の空気を変える作用です。
今まで私が、あっ、珈琲のおかげで、場の空気が変わったな、と思った経験は、最近ではロードバイクと呼ばれる競技用自転車を買い求めるために、自転車屋さんで出されたときでした。
専門的な自転車屋さんで自転車を買う経験は初めてで、若干浮ついた心持だったのですが、出されたそれの香りをかぎ、一口すすった後は、まるでスイッチが入ったように文化的で落ち着いた雰囲気になり、お店の人とゆったり話しながらスムーズに買い物が進んだのを覚えています。
どうもその香りに、秘密があるような気がします。
そのほかにはない、ちょっと焼け焦げたような、それでいて熟成したような、香ばしい香りは、まるでお寺の鐘の音が、仏教にゆかりのない外国人でも落ち着いた侘びさびの心持にさせる効果があるように、ゆったりと文化的、知的なものを受け入れる心の体制が整うようです。
コーヒーフィルターに盛られた豆にお湯が注がれ、湯気とともにその香りが立ってから、実際に口にするまでに、かなりの時間差があるのも、また人の想像力というものをかきたてる、粋な演出であるといえます。
ポタリ・ポタリと抽出された濃い茶褐色の液体が、ポットにほんのわずかずつたまっていく様子は、さながら砂時計や水時計そのもののように感じます。
お金が振り込まれると決まってから実際に振り込まれるのを待つ時間のように、収穫寸前の果物を見つめる果樹園農家の人のように、ポットに溜まっていく時間は、必ず来る幸福を待つまでの充実感と、早くそのときがきてほしいというわずかな焦燥感が入り混じった、いわば非日常的な冒険の心でもあるといえます。
そんなとき、あなたの頭脳はいきいきと活動を始め、明晰な思考とアイデアが駆け巡ります。
しかし、それと一見相反する要素で、共存できないかのように思われる、深い瞑想的な落ち着きも、飲む前からすでにあります。
そして、ようやく出来上がったその飲み物を、ゆっくりと確かめるようにすすり、口内を転がし、飲み込んだときに、ひとつの仕事を終えたような充足感に包まれるのです。
飲料には、それぞれ様々な効用があります。
明朗、爽快、慈愛・・それぞれ、気分を入れ替えるスイッチのような、人生を豊かにする効用です。
そして珈琲の場合はまさに、思索、瞑想、充足なのです。
今まで私は、何度もこの効用にお世話になってきました。
そしてこれからも、お世話になることでしょう。

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